あほキャス日記

Base Ball Bearの考察をしています

逆バタフライ・エフェクト

(※この記事の終盤では湯浅脱退の件について言及しますが、本編はもうちょい下から始まります。はじめは関係ない話と個人的な話が続きます。)
  9mmにも『Butterfly Effect』って曲ありますよね。ところで9mmも滝さん病気でライブは出演できてなく、2016年は僕が好きだったものがバタバタ形を変えてしまって(バタフライだけにね、超おもろいですね)精神がしんどかったですわ。3月にはBase Ball Bearで湯浅脱退、9月にはDOES活動休止、11月には9mm Parabellum Bulletで滝が休養と。現在活動してる日本のバンドで僕がよく聴くTOP5から3つがいっぺんに形を変えるってしんどすぎるでしょ。俺何か悪いことしたかって。ちなみに残り2つはPOLYSICSストレイテナーだけどそこには特に悪いことは起こらなくてよかった。ただ万が一その2つにも何かあったらデスブログとしてPV数が上がってしまいそのうち夜道で刺されそうだ。
  縁起でもないこと言うもんじゃないですね。2016年はそんな悲しみの連続に加えて、個人的なことではかつての大学休学期間のせいで4年生なのに卒業出来ないことが判明し(何ならちょっと就活始めちゃってたし)、バイトをすれば収入が扶養範囲超えそうになって各所に平謝りし、イギリス旅行に行けば持って行った自転車を盗まれ、ほんとエピソードに満ちた年だな。

(※ここから本編です)
  話をベボベに戻しましょう。アルバム光源の成功はベース関根のファインプレーが必須だったと僕は思う。アルバムC2から『曖してる』なんかで本格的にチョッパーを入れだして、ベースが曲を引っ張るノリに変化が出てきた。この曲でもそれが存分に発揮されている。ルート弾きベボベも控えめに言って最高だが、こういうノリもまた良し。ただ個人的には所謂「ルードかつ直線的なベース」(向井秀徳より)がどちらかといえば好きだけど。ナンバガのナカケンもミッシェルのウエノもPOLYSICSのフミもDOESのヤスも、そしてベボベの関根も、ルードかつ直線的なベーシストが好きだ。

  さて、バタフライ効果って微々たる変化でもあるのと無いのでは後々大きな差異を生むみたいなことを指す言葉だけど、元々は気象学の用語なんですね。映画のタイトルとか(見たことないけど)文学作品にもよく出てくるけどこれ書くのに調べて由来を初めて知りました。
  このテーマについては曲の解釈いうよりも、3人になってしまったベボベにとってのバタフライエフェクトって何なんだろうという僕なりの考えを連ねたい。そういうifの話は完全に意味ないけど考えずにはいられないもんで。

  真夜中のニャーゴとかでの小出の発言をもとに考えると、湯浅失踪の直接の原因はアルバムC2の制作だろう。湯浅がギターのフレーズを考えてくることが出来ず、制作の進行ペースが乱れて小出だけでなく堀之内もかなりキツい言い方したようだ。ただここでキツいこと言うのは、それがベボベの制作スタイルだから悪いことではないはず。いつかのインタビューで関根は、上手くいかなくてバンドを辞めろと言われて本気で辞めることを何度も考えた、と言っていたほどベボベの制作現場はストイックなものだ。そのストイックさを原因としてバタフライエフェクト認定してしまうと、結果として他のベボベのどの作品も消えてしまうことになるから違う。
  視点を「なぜ湯浅がフレーズを考えることができなかったのか」という点にズラしたい。端的に、かつ間違いを恐れずに言うのならそれはC2の制作で使用していたギターが原因だと思う。C2の制作ではSugiのRMG(Rainmaker Guitar)というギターを、小出と湯浅2人同じ種類のものを使っている。RMGにはアルダーボディとバスウッドボディがあるが、おそらく2人ともアルダーボディのものを使用している。小出のは黒ボディ白ピックガードでメイプル指板のものしか見たことないが、湯浅のは黒ボディ赤茶鼈甲柄ピックガードでローズ指板のものと、緑ボディ白ピックガードメイプル指板の2種類を見たことがある。湯浅が黒ボディ赤茶鼈甲ピックガードというとアベフトシへのリスペクトが窺えて嬉しい。湯浅の代名詞的なサンバーストのストラトの裏にはアベフトシのサインが入っているほどだし。
  しかしこのレインメーカーというギターを使うようになってからベボベのレコーディングは変化した。もともとは同じパートのギターも多重録音して音を作っていたのが、レインメーカーになってから重ねる回数が極端に減ったようだ。サウンド的にもシンプルになって、それから曲もブラックミュージックなノリが多くなって環境がかなり変わっていった。フレーズ作りに苦戦したのはこれも影響しているんじゃないかと思う。
  その辺のサウンドと曲のノリの変遷を、自分の感じる範囲で簡単にかつ極端にまとめたい。サウンドに関してはシンプルor多重、ノリに関しては直線的なギターロックorブラックミュージック的という何とも極端な区別で。最初期のベボベを基準として、直線的なギターロックというのはその最初期風な曲の作り方という意味で使う。

インディーズ時代…サウンドはシンプル、ノリは直線的なギターロック
C…少しずつ多重に、直線的だが変態コード多用(所謂「未知のコード感」)
十七歳…多重・ストラト湯浅のターン、ギターロックかつポップさが前面に
ラブポ…多重+変態サウンド(《SIMAITAI》とか)、ノリはギターロック・ギターポップだがより内向的
3.5th…多重かつ超絶エフェクティブ(《kimino-me》など)、ブラックミュージックとかファンクのノリの実験場(《十字架You and I》が代表)
新呼吸…多重の極み(《Tabibito In The Dark》《short hair》)かつ超エフェクティブ、ギターロックなノリ
二十九歳…多重、直線的なのもあるが注目すべきはファンク的な小出カッティングのノリ
C2…サウンドはシンプルに(Rainmakerが起因)、3.5thで実験して二十九歳で部分的に扱われたファンクやブラックミュージックなノリの本格実践

  自分でまとめてみてもこんなに分かりやすく単純に言えるものじゃないのにとも思うほど極端すぎるまとめ方だ。今後他の曲にも言及する中で僕の感じ方の細かいニュアンスを書きつつ、極端にまとめすぎたところを修正できればと思う。
  話を戻して、つまり湯浅はC2でサウンドのシンプルさとブラックミュージック的ノリが組み合わさったところにうまく順応できなかったのかと思う。逆に順応どころか先導して行けたのが関根かと。もちろん僕としてはC2もめちゃくちゃ好きなアルバムだし、ファンクなノリのベボベも良いと思う。ベボベにはその変化に聴衆をついて来させる色んな魅力がある。しかし人によっては受け入れ難い変化というのがあってもおかしくはない。湯浅の音楽ルーツや性格や技術や演奏スタイルやその他諸々の事情がC2とたまたま合わなかったのだと思う。

  半分忘れていた『逆バタフライ・エフェクト』の考察ということで考えると、Sugiのレインメーカーというギターが巡り巡って湯浅脱退に繋がったとも言えると思う。さらに遡ればライムスターとのコラボ、その布石となる3.5thでのコラボというもの自体のスタート、その理由の理由のうちの1つになりそうな1度目の武道館で小出がフラストレーションを覚えたというのも、ベボベにおけるバタフライの例だと思うがさすがに長くなるからやめておこう。率直なことを言うならば、SugiのレインメーカーはアルバムC2成功の要因ではあるが、湯浅にとっては呪いのギターだと思っている。
  確かに僕も元々は変態コードや変態サウンドを含みながらもポップかつ疾走感のあるギターロックという謎のバランス感に魅力を感じてベボベが好きになったし、昔の曲良いなって思うことは多い。湯浅が続けられていたようなベボベの音楽スタイルであったらいいのにと心から思う(それは昔に戻せという意味よりもC2的ではない変化の仕方だったらなと)。
  ただ聴衆の一員としてはそう思いながらも新しいものにもたくさん魅力を見つけてついていけるが、演奏者としては演奏の引き出しとか物理的で実際的な技術や発想なんかも必要で、その苦労を思うと湯浅だけではなく他の3人も本当に凄い。

  もし変化について行けなかった湯浅を責めていると認識した人がいたら、その誤解は解いておきたいし、逆に湯浅を脱退に追い込んだ様々な要因を責めていると認識した人がいたら、同じくその誤解も解いておきたい。何かを責めるというのではなく、その変化はベボベにとって起こると決まっていた仕方ないことで、現実とはそういうものだとつくづく思う、というだけだ。まさに
  決められたパラレルワールド
  決められた並行世界へ

って感じでしょうか。うまいことまとまりましたけど3700字ってベボベ学概論の期末レポートかよ。

ここでグッド・バイ